冷血 高村薫
「冷血(上・下)・髙村薫 ・新潮文庫」
「冷血」と言ってすぐに浮かんだのが
トルーマン・カポーティの同名小説でした、
実際に起こった事件を書いたノンフィクション・ノヴェルでした。
ワタシは未読ですが有名なので内容はなんとなく知っていました、
ただその重さに・・・読む機会がありませんでした。それとも避けてた?(^_^;)
今回、好きな作家である髙村薫さんが書かれた「冷血」を買ったのは、
まず文庫化されたこと、
帯に「合田刑事」と書かれていたことですね。
トルーマン・カポーティ版と違い、あくまで特定のモデルケースがない小説だとご本人が言われてると何かで読みましたが、
そう言われても、いくつかの実際に起こった凶悪事件の事を
思い浮かべてしまいました。
内容はトルーマン・カポーティの「冷血」に似ているので、
髙村薫版「冷血」と言うべきでしょうか。
購入して、すぐにページを捲り始めたら最後、
一気に読破しました。
上巻は「動」で展開は速く、下巻は犯人の心の深淵に踏み込む「静」というか、
答えのない闇の深さがどこまで続くのかといった感じで、
どこに救いがあるのか、それさえも求めてはいけないのか・・・。
まるでノンフィクションのような展開で物語は進みます。
とても読み応えがあり、そして深く考えさせられました。
久々の髙村薫さん、相変わらず女性とは思えない文章とスケール感で迫ってきます。
かつて「マークスの山」北岳が舞台のミステリーで
合田刑事が登場しました、映画化されて
その時に合田刑事を演じたのが中井貴一さん、観て適役だとワタシは感じましたが。
なので、それ以後、合田刑事のイメージはいつも中井貴一さんなのです。
そして「レディ・ジョーカー」これは傑作でしたね、面白かった!
映画化されましたが・・・こちらは原作のほうが・・(^_^;)
あと「照柿」は行間から湿り気と匂いが
漏れてくるようなうな生々しさがありました。
そんなわけで合田刑事シリーズといわれるものは
一応全部読んでますが、
この「冷血」の前に登場したらしい「太陽を曳く馬」は未読です、
それを読むならば「晴子情歌(上下)」から「新リア王(上下)」も
読まねばならず、かなりのボリューム、
まぁ、今のところ、折りを見てですかね。
合田刑事シリーズ以外もいくつか読みましたが
中でも「李歐」は感動したなぁ、最後のシーンは特に好きでした、
風景が見えるんですよねぇ~桜の・・・。
本の向こう側に広がる世界、読後感が良かったなぁ。
さて、「冷血」ですが、まずその合田刑事も歳を取ってると言うこと、
無理のない設定で登場してくれます。
例えば昔よく読んだ森村誠一作品で登場する棟居刑事と比べると
こちらがよりリアルに響き親近感が湧きますね。
あっ、そうだ、棟居刑事と言えば松田優作のイメージが強いですねぇ~、
映画「人間の証明」で。(笑)
話を戻して・・・
読後にキャベツを玉で買ったのですが、その時に思い出しまして、
ちょっと困りましたね、読んだ方なら分かりますけど。
とても生々しい話だったので。
最後もそのキャベツ・・・、まぁ、それは良いけど
圧倒的な絶望しかない物語だけど、少し光が差したとすれば
それは最後の一文にあったかも知れないなと思いました。
映画化するなら合田刑事は中井貴一さんで(笑)
でも、やはり本は越えられないと思う、
犯人像が演じきれず絶対陳腐になりそう。
by opaphoto | 2018-11-18 23:00 | 本の雑記 | Comments(0)