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冷血 高村薫

「冷血(上・下)・髙村薫 ・新潮文庫」


「冷血」と言ってすぐに浮かんだのが

トルーマン・カポーティの同名小説でした、

実際に起こった事件を書いたノンフィクション・ノヴェルでした。

ワタシは未読ですが有名なので内容はなんとなく知っていました、

ただその重さに・・・読む機会がありませんでした。それとも避けてた?(^_^;)


今回、好きな作家である髙村薫さんが書かれた「冷血」を買ったのは、

まず文庫化されたこと、

帯に「合田刑事」と書かれていたことですね。


トルーマン・カポーティ版と違い、あくまで特定のモデルケースがない小説だとご本人が言われてると何かで読みましたが、

そう言われても、いくつかの実際に起こった凶悪事件の事を

思い浮かべてしまいました。

内容はトルーマン・カポーティの「冷血」に似ているので、

髙村薫版「冷血」と言うべきでしょうか。


冷血 高村薫_b0247073_17541871.jpg




購入して、すぐにページを捲り始めたら最後、

一気に読破しました。

上巻は「動」で展開は速く、下巻は犯人の心の深淵に踏み込む「静」というか、

答えのない闇の深さがどこまで続くのかといった感じで、

どこに救いがあるのか、それさえも求めてはいけないのか・・・。

まるでノンフィクションのような展開で物語は進みます。

とても読み応えがあり、そして深く考えさせられました。


久々の髙村薫さん、相変わらず女性とは思えない文章とスケール感で迫ってきます。

かつて「マークスの山」北岳が舞台のミステリーで

合田刑事が登場しました、映画化されて

その時に合田刑事を演じたのが中井貴一さん、観て適役だとワタシは感じましたが。

なので、それ以後、合田刑事のイメージはいつも中井貴一さんなのです。

そして「レディ・ジョーカー」これは傑作でしたね、面白かった!

映画化されましたが・・・こちらは原作のほうが・・(^_^;)

あと「照柿」は行間から湿り気と匂いが

漏れてくるようなうな生々しさがありました。

そんなわけで合田刑事シリーズといわれるものは

一応全部読んでますが、

この「冷血」の前に登場したらしい「太陽を曳く馬」は未読です、

それを読むならば「晴子情歌(上下)」から「新リア王(上下)」も

読まねばならず、かなりのボリューム、

まぁ、今のところ、折りを見てですかね。


合田刑事シリーズ以外もいくつか読みましたが

中でも「李歐」は感動したなぁ、最後のシーンは特に好きでした、

風景が見えるんですよねぇ~桜の・・・。

本の向こう側に広がる世界、読後感が良かったなぁ。


さて、「冷血」ですが、まずその合田刑事も歳を取ってると言うこと、

無理のない設定で登場してくれます。

例えば昔よく読んだ森村誠一作品で登場する棟居刑事と比べると

こちらがよりリアルに響き親近感が湧きますね。

あっ、そうだ、棟居刑事と言えば松田優作のイメージが強いですねぇ~、

映画「人間の証明」で。(笑)

話を戻して・・・

読後にキャベツを玉で買ったのですが、その時に思い出しまして、

ちょっと困りましたね、読んだ方なら分かりますけど。

とても生々しい話だったので。

最後もそのキャベツ・・・、まぁ、それは良いけど

圧倒的な絶望しかない物語だけど、少し光が差したとすれば

それは最後の一文にあったかも知れないなと思いました。


映画化するなら合田刑事は中井貴一さんで(笑)

でも、やはり本は越えられないと思う、

犯人像が演じきれず絶対陳腐になりそう。



by opaphoto | 2018-11-18 23:00 | 本の雑記 | Comments(0)